★★★★ これを観とけば間違いなし!

人間解剖島 ドクター・ブッチャー
Zombie Holocaust / Doctor Butcher M.D.

(1980-Italy:C-90/89/82 m.)
Directed by Marino Girolami
Screenplay by Romano Scandariato[1]
Story by Fabrizio De Angelis[1]
Produced by
Gianfranco Couyoumdjian
Fabrizio De Angelis
Starring:Ian McCulloch,Alexandra Delli Colli,Sherry Buchanan,Peter O'Neal,Donald O'Brien
Cinematography Fausto Zuccoli[1]
Music by Nico Fidenco[1]
いったいこんな作品を何回観るのだ、と自分でも哀しくなってくる時も有る。
でも観続けねばならなかった。謎を解くために。
一番最初は友人の持っている海外版予告編を何回も見せられたから。その頃は日本にも劇場でもビデオでも観れなかった作品だった。おお、なんか、これひどいね、と大受けで一緒に観たもんです。"Doctor Butcher M.D."という題名で、その友人は"Doctor Butcher MAD"と呼んでいた。しかし予告編では"Doctor Butcher , Medical Deviate"って発音してるし、そっちが正しい題名なのだろうな、とは思ってた。
そして、これがビデオで流通しだしたか、というタイミングで劇場公開された。にっかつの快挙である。大阪では二本立てで公開されて当然行ったのだが、その併映がどうしても思い出せない!二本を観終わった後にとても悲しくなったようなそんなどうしようもない一作であったような気がする。記憶力の衰えがひどいものである。仕方ないので当時のチラシとか探してみたら、関東では『人喰族』と二本立てだったようで。劇場もにっかつ系統なので関西も同じだったろうな、という事でこれが併映だった事にしておく。こちらも相当にひどい一作で有名でしたが。
さて、そして時は流れて、この作品のビデオが普通に買えるようになった。日本で出たVHSくらいは買っていた気もしたので自宅図書館に探しに行くとVHS棚に有りましたよ。82分版でした。劇場で観たのと同じだったのか記憶が無いし今から観直す気にもならない。


その後、DVDやブルーレイが出だすとややこしい話になってきた。"Zombie Holocaust"って題名で90分(89分の表記も有るが誤差でしょう)。こちらがそもそもイタリアのオリジナル版。で、当然のように(なぜ当然?)DVD買ったのですが、どうも私が劇場で観たものとは違うのだ。最初の墓場やゾンビのシーンが無いではないか。なんだこっちの方が長いのに足りないのか?こうなると本邦劇場公開版の"Doctor Butcher M.D."の方が観たいぞ、となるのが人間の性でしょう。
題名の違いで区別できれば簡単なのですが各国で入り乱れてDVDが出たので中身はどっちなのか開けてみるまで分かりません。

で、メルボルンに一か月出張でいた時に街のレンタルDVD屋で中古のDVDを買ってみた。オーストラリア盤ってのは開けてみないと判らない独自のバージョンである事も多いのでちょっと冒険の気分でした。

が、宿に帰ってポータブルのDVDプレーヤーで始めて見ると、「アーアーアーアーアー」って耳慣れた音楽が。あれ、でも、これって…….

『サンゲリア』ですよねぇ。……この中古DVD、中身が違っとる!
うーむ。恐るべしオーストラリアのレンタルDVD屋。しかし、そのまま『サンゲリア』も最後まで観てしまったのも情けない。おかしかったのはこの2作はほとんど同じようなスタッフが連続して撮っていて、主演も同じ俳優、ロケも同じとこでやってまして、セットなんかも同じやん、と気が付いてしまいます。まぁ、異国の地の事件としては面白くなくもないのでそのまま返品しないで持っておくことにする。
で、いったい私が見たい冒頭墓場のバージョンはどうしてくれる?とブルーレイも"Zombie Holocaust"で買ったのですが、当然ながら"Zombie Holocaust"なので冒頭墓場は有りません。そんなに観たかったら手元にあるVHSで観ればよいじゃないか、と今になったら思うのですが、実はVHS買ってたのを忘れてた。そうこうしているうちに忘れてしまい、今日に至っていた。

が、先日、中古DVDで日本盤のブルーレイ見つけてしまったのだ。まぁ、前から有るのは知ってたのですが、これに3-4千円も出さないでしょう、と放っておいたのですが、今回、1600円と。しかもブルーレイ2枚でそれぞれ"Doctor Butcher M.D."と"Zombie Holocaust"が別々に収録されている、と。これ買うしかない、と。

で、じっくりと自宅で見比べてみました。わかりましたよ。すっきりしました。しかも、"Doctor Butcher M.D."は全米劇場公開用にダルいところはカットして、冒頭に別の未完成ゾンビ映画のシーンを流用し(特典のインタビューによると3分間300ドルなどで買ってるとこがおかしい)取って付けて、しかもジャングルの落とし穴のシーンはわざわざ同じ俳優を連れて来て撮り足したらしい。あまり意味の無いシーンだと思うけど。しかもジャングルの設定なのに木がちょろっとだけで、その辺の野原で撮っているのが丸わかりで不自然。
比較するために両方の盤を繰り返し観て満腹で、しばらくこの映画は観たくなくなりました。"Medical Deviate"の意味も分かりました。以前、調べてみたらそんな医者の分類なんて無くて、どうした事か、と思ってたんですが、これって医者の分類じゃなくて駄洒落かよ、と。"MD"は普通に"Doctor of Medicine"有るんで。
やっぱりひどい映画だなぁ、と思う。残酷度に節度が無い。姉妹篇『サンゲリア』はやっぱり監督がしっかり者なので残酷度は高いが、それなりにテクニックが有って傑作だなと思いますが、こちらは出来の悪い弟、みたいな感じです。
それでもやっぱり、意味はあまり無いが、ヒロイン豪快ご開帳裸シーンは何の遠慮も無くしっかり撮ってるし、観客の観たいものをしっかり判ってると言えば判ってます。
以前なら最低点を付けていた作品ですが、いろいろ集めて愛着も湧いてきて最高点というのが正直なところです。
肉の蝋人形

(1997-Itly:C-95m.)
MASCHERA DI CERA
GASTON LEROUX'S THE WAX MASK
M.D.C. - MASCHERA DI CERA
THE WAX MASK
監督:セルジオ・スティヴァレッティ
製作:ダリオ・アルジェント,ジュゼッペ・コロンボ,フルヴィオ・ルチザーノ
原作:ガストン・ルルー
原案:ダリオ・アルジェント,ルチオ・フルチ,ダニエル・ストロッパ
脚本:ルチオ・フルチ,ダニエル・ストロッパ
撮影:セルジオ・サルヴァティ
音楽:マウリツィオ・アベニ
出演:ロミーナ・モンデロ,ロベール・オッセン,リカルド・セルヴェンティ・ロンギ
,ガブリエラ・ジョルジェーリ,ウンベルト・バッリ
公開時に観た時は残酷のきつい事、という記憶が有って、アルジェント絡み(監督でない)のうちでは一番出来が良かった、という気もしていた。
もう数十年たったしあまり覚えてないし、また観たいな、と思うと中古ブルーレイとの遭遇。そういうもんです。
やっぱり面白いなぁ。
さて、主演にロベール・オッセンという破格の大物。誰がアルジェント絡みの残虐映画に主演すると思ったでしょう。まぁ、誰がやってもいいような気もしますが。
それよりも何の期待もしてなかったヒロインのミーナ・モンデロが無茶苦茶いいじゃないですか。あの剃った眉毛さえ何とかしてくれれば。全然ロマンティックにならないようにいきなり無頓着に裸を出すのもアルジェント嗜好ですよねぇ。また、このコも気前よく脱ぐものですねぇ。
物語が妙に複雑なとこもあって捻ればいいってもんじゃないよ、のアルジェントらしさ満点。イタリアン・ホラーのCGは特殊効果のセルジオ・スティヴァレッティが先駆者のようなものなのでこの作品あたりから本格的に多用されるようになったとの事。巧みに多用してて当時のゴシックな雰囲気が良く出てました。
これはそもそもアルジェントとルチオ・フルチの温めていた企画で両巨頭の初の共同作になるはずだったのにフルチが死んでしまったので特殊効果セルジオ・スティヴァレッティの監督となったのでした。アルジェントにやってほしかった。
凱里ブルース

路邊野餐 Kaili Blues
(2015-中国C-113m.)
監督ビー・ガン
脚本ビー・ガン
出演 チェン・ヨンゾン,ヅァオ・ダクィン,ルオ・フェイヤン,シエ・リクサン,ゼン・シュアイ,クィン・グァンクィアン,ユ・シシュ,グゥオ・ユエ,リュ・リンヤン,ヤン・ヅォファ
昨日、シンガポール映画『幻土』での郭月(クォク・ユエ / 英語読みだとルナ・クォクなるほど)は見所がある、と見てそのほかの出演作を、と今日これを観る。配信とかなんとかで観たい映画もすぐにたどり着く。いい時代になったもんだ。けど、こんなに自由でいいのかとも思う。映画に飢えていた小学生時代にこんな環境があったらもう寝る間も惜しんで外にも出ない配信ジャンキーみたいになってただろう。大学時代の映画サークル友人と昨今話してみて判るのは、彼は映画を観に行く、という行動も含めて社会参加しているのだ。だから作品そのものだけでなくて自分以外の観客も含めて行動そのものとして映画を観ているのだ。これは正しい。だからこそ映画の公開自体がイベントとして人生に刻み込まれるのだ。私はある時期からこれを捨てた。作品そのものを味わう事だけに特化したのだ。ビデオ時代はその幕開けだ。ただ、そのころでも、観たいビデオをレンタルで入手するために電車を乗り継いで数時間かけて自宅に持って帰る、というイベントではあった。ビデオ、LDとかDVDとかでメディアを集める、というその後のスタイルもまだ何かしら生活とのとっかかりは有り、イベントではあった。だが、昨今の配信で映画を観る、はどうしたことだろう。もうある意味究極の鑑賞集中スタイルにたどり着いてしまったのだ、人間。あとはもうスクリーンやディスプレイなんかの物理的な画面とかも必要無くなって、錠剤飲むとか機械の前で脳に直接作品を送り込む、とかそういう方法になるしかない。たぶんなるだろう。70年代に上映施設に人間を送り込む『ソイレント・グリーン』を観た時は人間に映画を植え付けるのは、そんな遠い未来じゃないな、と感じたけど、もうそこまで来ているのは確かだ。少しでも多くの作品を自由に観たい、という欲望のままの私は確実にそっちに流れるのだろう。

で、この作品だが、配信レンタル、みたいなので250円課金されて観たわけだ。配信は実際はただではないのだが、別途お支払いが生ずる、ってのは抵抗が有ると言えば有る。けど、250円ですぜ。これでこいう岩波ホール的作品を自宅のスクリーンで好きな時間に好きなようにひとりで観れるなんて。なんて幸せだ、と思ったとたんに仕事のトラブル連絡が矢継ぎ早に入り、中断も甚だしい。なんでわざわざ今なんだよ、と文句たらたらでなんとか電話しまくって解決する。さて、これはなんか知ってる空気を浴びるように観れた。中国は貴州省の凱里市が舞台。田舎だ。さすがに行ったことは無い。馬乗りに湖南に滞在した事は有ったので、まぁ、ここの近くまでは行ってたのだ。こういう見知らぬ中国の田舎ってのはなんでこんなに惹かれるんだろう。これはもう言葉では言い表せない、身体の慣れ、と言うのだろうか。何も無い、所に仕方なく生活していて、それでも渦巻く人間、のむき出しの性とか文化、みたいなものに触れるのが好きなのだ。一時期、少数民族の土家族(トウチャ)の女性と仲が良かった事がある。人柄以外にも独特の文化とか価値観に惹かれたのは確か。次の里帰りの時は家族に会わせる、という約束までしていたのだが....行きたかったな。

で、これは、とある男性の人生の後悔とか細い将来への夢を淡々と描く。例によって時空が適当に混在していて、最近の中国映画はこういうのはやりかよ、と思ってしまう。せっかくいい雰囲気でいいもの見せているのに、ストーリーはどうでもいいのか、と。出てくる女性がどれもこれも地味に素敵で、時間でいうと数分、のちょっとしか出ないキャラクターがなんか素敵なのだ。期待の郭月も良かったなぁ。目つきが素晴らしい。体型もだが。ほんといいもの見せてもらった、という気はする。今や気楽に大陸に行けなくなった時代なのでもう二年以上中国へは行っていない。次は、こういうところに目的をもってしっかりと行ってみたい。が、何時間も永遠に乗り続ける硬座の列車とか殺されそうな四駆とかはもう勘弁してほしいが。ロカルノ国際映画祭最優秀長編賞、ナント三大陸映画祭グランプリ、台湾・金馬奨最優秀新人監督賞とか獲っている。みんな私みたいな視点だったのかな?
ダブル・ミッション

The Spy Next Door
(2010-US;C-92m.)
製作総指揮ライアン・キャバノー,ジョージ・パラ,アイラ・シューマン,ソロン・ソー,タッカー・トゥーリー
製作ロバート・シモンズ
監督ブライアン・レヴァント
脚本ジョナサン・バーンステイン,ジェームズ・グリア,グリゴリー・ポイリアー
音楽デヴィッド・ニューマン
撮影ディーン・カンディ
出演ジャッキー・チェン,アンバー・ヴァレッタ,マデリン・キャロル,ウィル・シャドレイ,アリーナ・フォーレイ, キャサリーン・ボーチェー
新作かと思って観たら、なんとジャッキー・チェンが若いんです。なんだ特撮か、と思いきや2010年の作品と!見落としか!なんだかんだ言っても彼の映画は作られたら観る、を信条としてきたのに。でもアメリカ映画に出るとまったくヘタレな作品になるのでこれも全然期待していなかった。が、なんだ、これ、幼稚だけど、いいじゃないか!そうなんだよな、こういう冴えない隣のオッサンになってもいいと思う(実際は諜報員で見た目とは全然違う超人なのだが)。ペンの輸入を商売にしている、と恋人の子供たちにバカにされるのだが、ペンの輸入をしている人たちがかわいそうだろ。『素晴らしき哉、人生!』でも主人公が自分がもしいなかったら恋人は図書館の司書で暗い人生を送っていた、なんて神様が見せる描写があってこれも司書さんたちに大変失礼な話だな、と思ったけど。
さて、なんでこれこんなに良かったかと言うと、主人公の恋人の娘を演じるマデリン・キャロルの目がとてつもなく好きだから。くそ生意気なガキだな、と思いきや、あの目つきにはやられる。さらに敵方のロシア女キャサリーン・ボーチェーのどこぞで見かける魔性の女そのものの黒の衣装と体つきにKOされる。この怪しい目つきに髪型、服、典型的な悪女スタイルなのだが、いいんだよねぇ。この二人がいるので目が楽しんで楽しんで。と、思ったらしっかりほろりとさせられ。直球な話だけどかえってそれでよかったのかもしれない。なんだ、これアメリカ産のジャッキー映画でいちばんいいじゃないか!
『Xメン』のアレックスも出てましたね。
ザ・ファブル 殺さない殺し屋

(2021-日本;C-131m.)
製作代表 高橋敏弘 沢桂一 藤島ジュリーK. 菊川雄士 有馬一昭 角田真敏 田中祐介 坪内弘樹 昆野俊行 加藤智啓 森要治 小櫻顕 廣瀬健一
監督 江口カン
原作 南勝久
脚本 山浦雅大 江口カン
撮影 直井康志
音楽 グランドファンク主題歌 レディー・ガガ アリアナ・グランデ
岡田准,木村文乃,安藤政信,黒瀬純,好井まさお,橋本マナミ,宮川大輔,山本美月,佐藤二朗,佐藤浩市,堤真一
続篇。相変わらず面白すぎ。しかし、今回は敵役堤真一の狂いぶりも見せなきゃならないので、その分膨らみすぎて131分という長さになってしまい、その分ちょっと息継ぎしなくちゃならない、のが弱点か。いやそれでもやっぱり最後までいっきに見せる面白さ。木村文乃のプロぶりがはたまた最高。原作漫画はどうでもいいから、次作ってくれないかなぁ。
ザ ・ファブル

(2019-日本;C-119m.)
監督 江口カン
原作 南勝久
脚本 渡辺雄介
製作 大角正 今村司 藤島ジュリーK. 谷和男 有馬一昭 角田真敏 田中祐介 坪内弘樹 和田俊哉 赤座弘一 大鹿紳 小櫻顕 毛利元夫
撮影 田中一成
音楽 グランドファンク主題歌 レディー・ガガ
岡田准一,木村文乃,山本美月,福士蒼汰,柳楽優弥,向井理砂,佐藤浩市
原作の漫画とかは一切知らないが、これは観始めると一気に観てしまう面白さがありました。主人公のとぼけぶりプラス相棒の女性のぶっ飛びぶりが最高でした。特に気に入ってしまって何度も見直してるのが、世話になってる組の大物から「オレのハコスカには指一本触れるんじゃねぇ」って言われるとこ。絶妙のタイミングで乗ってるんですよねぇ。こういう面白い映画も知らないまま過ごしてきたが、まだまだ埋もれているんですねぇ。自分ではメディア買ったり借りたりはしないけど、って配信で観れてしまって世界が広がる、ってのもいい事だろう。続篇もすぐ観よっと。
エルヴィス

Elvis(2022-US;C-159m.)
製作バズ・ラーマン,キャサリン・マーティン
監督バズ・ラーマン
脚本バズ・ラーマン,クレイグ・ピアース
撮影マンディ・ウォーカー
出演オースティン・バトラー,トム・ハンクス,オリヴィア・デヨング
意を決した。この作品はそう簡単には観るわけにはいかなかった。エルビスを生半可に描いてなぞろう、なんてそんな容易い事じゃないからだ。だから寄り付きもしなかったのだが。が、これは良かったよ、とある人からの一言があった。彼女が言うなら、ことエルビスに関してのこの人の関門をクリアーしたのなら、これは観るべきものであると判断した。そして、これが、160分近くもある超大作であった、事がまず正しい。今までここまで側面史、を描いた作品はなかったから。この作品の語り部はトム・パーカー大佐であるとはなんと驚きの。だいたいトム・ハンクスがその役をやる、って時点で、おいおいまたかよ、とうんざりしてはいたのだが。まさか、晩年のエルビス役じゃないだろうな、と先に聞いておいたのだが。またしてもトム・ハンクスの「アカデミー賞欲しいよ病」である。「この映画観たなら一番覚えておいてねこのわたくしを病」でもある。また、この肥大化した面を見るのか、とげんなりはしたのだが。けど、これはほんとに賞獲れそうだな。困ったもんだ。冒頭から今風の画面で遊びまくりますCG満載。ああ、こういう進み方するのか、と少し気が楽になった。主演のオースティン・バトラーはまるで似てはいないのだが、何か発散するものはあり、必ずしも似ているだけが重要でない、ってのは判って作っている。これは良い。そして、おなじみのステージの、映画の、カッティングからフィルムの粒子から再現したその意気込みと言うよりもうまさに脱帽。もう身体に染みついている絵、音、台詞、歌。自分の脳裏にあるそのシーンよりもカットが長かったりするのだから。やっぱり誰が演じてもエルビスにはなれないのだから、『ジス・イズ・エルビス』以上の作品にはなれなかったが、今の時代に、新しい伝説としてこんな大作ができたことは手放しで喜ぼう。そして、また、明日から『エルビス・オン・ステージ』も『Comeback Special』も引っ張り出してきて観続ける事になるのだろう。私が初めて接した小学生の頃は友人からは「あんなに太って」とか馬鹿にした発言しかなかったのだが。そんな子供のころでも初めて『エルビス・オン・ステージ』で聴いてから以後一生耳から離れなかった「Polk Salad Annie」と「Tiger Man」をここでもフューチャーしているのである。やっぱり感じ入るところのコツをしっかり判ってる。そして学生の頃もっとも感銘を受けた「Suspicious Mind」も。感動させるべき観客が判ってやってるんだな、私も彼には大恩がある。彼の存在がとある時期のとある身近な人を支えていてくれたから。私と言えば彼が亡くなった時、初めて堂々と大人の週刊誌『プレイボーイ』を「エルビスの記事があるから」と店頭で購入できたのである。純真な中学生だったからね。彼の記事よりも他の部分が目当てでした。今の世から考えたら可愛らしいもんである。
私たちが今の世に日本でこうやって観るのとアメリカ本国での体感とはずいぶん違ったものがあるのだろう。エルビスはもう文化そのもので身についているのだ、かの国では。そして、キング牧師やロバート・ケネディの件で国が傷を負った、と感じる事は私たちとはまた一味違うはず。そういう視点もちゃんと持たしたところがこの作品が価値あるものになっている大きな理由だ。
この作品のサントラ盤はどうしたものか。オースティン・バトラーの歌でいいんだろうか。サントラ盤なんだから良いんだろうけど本物で息遣いまで知っている私たちはどうすれば良いのだ?やっぱり明日は終日エルビス漬けだ。そして、私も、27本あるエルビス映画を全部観ることにしようかと決心した。うちにどれくらいあるんだろう。
ドライブ・マイ・カー Drive My Car

製作:中西一雄,山本晃久
監督:濱口竜介
脚本:濱口竜介,大江崇允
原作:村上春樹「ドライブ・マイ・カー」など(『女のいない男たち』 文藝春秋刊収録)
出演:西島秀俊,三浦透子,霧島れいか,岡田将生
世界中で絶賛され各賞を受賞しまくったのは私は興味ないので別にして、ふと観始めた。
大変良くできました。主演の西島秀俊が個性を100%使い切っている。こういう内に向うキャラクターを演じるとこの人は実にいいのである。いつものやたら力んだり挑戦的である態度が無い分、いいところだけを研ぎ澄まして出せた。いい役に巡り会えたものである。彼の力がこの作品のほぼ全部を占めている。舞台が舞台なので、登場人物がみんなこんな喋り方になるんだろうか。棒読みに次ぐ棒読みなのだ。中国人、の設定で出てくるソニア・ユアン(袁子芸)が台湾人だからなのか普通語までがなんか聴き取りにくいのだ(私のヒアリング能力のせいでもあるが)。オフビート感を前面に出した演出も効果的だった。何よりサーブ900ターボが効いている。このような扱いにくい車に乗り続けている主人公のこだわりさが実に解りやすい。ああ、旧車はやっぱり良いよな、と。今日は私もこだわりの人となってガレージの奥から旧車をひっぱり出して乗った。経年劣化で排気ガスが車内に入り込んでくるので長時間はきついのだが(近所の車屋の社長曰く、それは日産車の特徴であり夏がひどく感じるけど寒くなったらましになりますよ、との事だったが寒くなっても同じみたい)。
世間の風潮が嫌いで原作村上春樹は何が有っても絶対読まない、と大学生の頃に決めたので読むことは無いだろうが、このエピローグ、何か答えは欲しいよね。韓国・車・犬がすべてを表してるか。
実に心地よい作品であって、2021年だったら私も邦画ではこれをベスト1に選ぶだろう。
アイリッシュマン
The Irishman

(2019-US:C-209m.)
製作 マーティン・スコセッシ,ジェーン・ローゼンタール,エマ・ティリンジャー・コスコフ,ロバート・デ・ニーロ,ガストン・パヴロヴィッチ
監督 マーティン・スコセッシ
脚本 スティーヴン・ザイリアン
原作 チャールズ・ブラント『アイリッシュマン』
音楽 ロビー・ロバートソン
撮影 ロドリゴ・プリエト
出演者 ロバート・デ・ニーロ,アル・パチーノ,ジョー・ペシ,レイ・ロマーノ,ボビー・カナヴェイル,アンナ・パキン,スティーヴン・グレアム,ハーヴェイ・カイテル
これは凄い。こんなものを今まで観ていないとはなんたる事か。と言うか知らなかった、こんな作品。申し訳ありません。
しかも、誰が出ているかも知らないで観始めたしクレジットも無いので、ええ、これって老いた(姿の)デ・ニーロとこれまた大年寄りになってるジョー・ペッシか。凄いな、と思ってたら物語もだいぶ進んでからいきなりアル・パチーノ!私はひっくり返りました。デ・ニーロは後年、若干、仕事を選ばないきらいも有るので出てくるだけ、ってのも有りがちだが、これは配信の通りがかりに観るようなもんじゃないな、と覚悟しました。
凄いです。3時間半。登場人物の名前には聞き覚えが有るのですが事実関係を知らないので私にはまったく初めてのお話でした。これは主演の3人の全部にオスカーを与えるできだったでしょうに。ノミネート10部門でひとつも取れないような作品じゃないですね。
こうやって揃ってみると、デ・ニーロの静とパチーノの騒がしさの対比が堪能できました
。知らなかったけど観てる途中でスコセッシの作品だと確信しました。
後半の1時間くらいは人が老いる事について延々と描かれるので、これも身に沁みました。私はここ一か月は家族の老いというものを目の当たりにして人間の終わりとは、を考えさせられてるところだったので。
まったく満腹そのものでした。
明日からは『F.I.S.T』と『ホッファ』を観てみたいと思います。
フランケンシュタイン(2025)

Frankenstein
(2025-US:C-150m.)
製作 ギレルモ・デル・トロ,J・マイルズ・デイル,スコット・ステューバー
監督 ギレルモ・デル・トロ
脚本 ギレルモ・デル・トロ
原作 メアリー・シェリー
音楽 アレクサンドル・デスプラ
撮影 ダン・ローストセン
出演者 オスカー・アイザック,ジェイコブ・エロルディ,ミア・ゴス,クリストフ・ヴァルツ
NETFLIX予算とCGを駆使した最新の映画化。大作です。
私は今までにユニヴァーサルもハマーもメキシコもスペインも日本もB級もZ級もフランケンシュタインと名の付くものはしらみつぶしに結構観てきたと思うのだが、私にとってはこれが今までのフランケンシュタイン映画のベストです。今までは『真説フランケンシュタイン』としていましたが。
とにかく新しいしCGの力も借りてるから音響は素晴らしいし舞台となる背景や建物の内部も最高であります。役者は?が付く人が多いのですが。
原作をなぞったように作った映画化ってのは結局今まで無かったし、これも独自な路線を行く。でも、テーマの置き方がしっかりしていて、こういう見方をさせる作り方も有ったか、と。
子供の頃長い原作は読んでたと思うのですが、もう一度読んでみようかと思わせる。つまり、どの映画化も怪物のように原作を継ぎはぎして筋書きを作っている。原点はなんだったか、をきっちり確認したくなったから。
お葬式に乾杯!

Death at a Funeral
(2010-US;C-92m.)
Directed by Neil LaBute
Screenplay by Dean Craig Based on ”Death at a Funeral” by Dean Craig
Produced by Sidney Kimmel,William HorbergChris Rock,Share Stallings,Laurence Malkin
Cinematography Rogier Stoffers
Music by Christophe Beck
Starring Loretta Devine,Peter Dinklage,Danny Glover,Regina Hall,Martin Lawrence,James Marsden,Tracy Morgan,Chris Rock,Zoë Saldaña,Columbus Short,Luke Wilson
地味だが無茶苦茶面白いです。父親の葬儀に集まった親族一同の騒ぎ。台湾映画『父の初七日』を参考にしてるかな?と、思ったら、これがなんととある作品のリメイク。観る順番間違えたか。さっそく探し出さないと!
『ハウエル家のちょっとおかしなお葬式』という。2007年の作品だからたった3年しかたってないのに。やはり話が無茶苦茶面白いからなんでしょう。
ここでは文句たれの爺様役で出てくるダニー・グローバーが最高です。『リーサル・ウェポン』ばりに
''I'm too old for this shit'`なんてぼやいてるし。これ見るだけでも値打ちあり。
ああ、そして青くも緑でもないメイク無しのゾーイ・サルダナも出ています。素顔だとかえって判らないもんで。
そして両方観ている人にはちゃんとボーナスが有るんですねぇ。このとある配役!両方観てないと分かりません!
刑事ペーテル~未解決事件捜査班~ シーズン2

Det som göms i snö / The Truth Will Out
監督 クリスティアン・ペトリ原案 レイフ・GW・ペーションペーテル;ロバート・グスタフソンカイサ;ルイーズ・ピーターホフヨルマ;クリストファー・ワゲリーンバルブロ;イーア・ラングハンマル
シリーズ2。相変わらず精神的な苦悩にまみれる主人公。北欧ってこういう風に精神障害になりがちな風土でもあるのかな。毎日あんな天気と風景の中じゃねぇ。おなじみのメンバーも揃って安心して観れます。物語がとんでもなく暗いので観ながら気も滅入るのですが、なんか癖になってしまい早く続きを、という気になってしまう。そして主人公の目が意外と幼く見える時があるのに驚く。なんとこの人コメディアンでもあるとな。キャラクターの紹介とそのぶつかり合いの意味もあったシリーズ1よりも事件に特化できて面白くなったと思う。が、例によって偶然中の偶然みたいなのが平気でまかり通る北欧ミステリーの世界なので筋書きは結構乱暴だと思うが。演出に省略が多いのがかえって余韻を出していていいと思う。これは正解だ。ルイーズ・ピーターホフの意味ありげな視線の鋭さがまた深みを出している。
エピローグを観る限りではもうこのシリーズで最後になってもおかしくはない。が、もうちょっと続けてくれないかなぁ!
25ミニッツ

Ambulancen
(2005-デンマーク;C-77m.)
監督 ラオリツ・モンク・ペターセン製作 トマス・ラドアー脚本 ラース・アンドレアス・ピーダーセン撮影 ヤン・パレセン出演 トマス・ボー・ラーセン,ポウ・ヘンリクセン,ヘレ・ファグラリズ
隠れた秀作。なんでかと言うと、日本では劇場未公開でDVDでのみ公開。しかも、『TAXI』もどきの安っぽいカー・アクション映画のように売り出したから。題名も『救急車』から『25ミニッツ』とか。まったくバカである。こんないい作品を。もちろんアクション映画ではない。主人公の兄弟二人組の銀行強盗には背景が有り、そしてそれらが、彼らがどんな二人であるかを判らせ始める。救急車にはGPS機器が取り付けらえれているのに気が付いてそれを近くを走っている牛を積んだトラックの荷台に投げ入れろ、と兄は言う。警察に間違った車を追わせるためだ。「牛に当たるよ!」と返す弟。人柄が出た。まったく最高である。ここ数日観た作品の中で最高の台詞でした!
物語の展開も面白いし、よくぞこんな作品を隠してたな、と思わす。この救急車にたまたま乗り合わせていた新米救急士の女性を膨らませたのがこれのリメイクのアメリカ映画『アンビュランス』(2022)だ。最後もホント感動的で、予算とか作品の格はリメイク版大作とは比べ物にもならない小品だが、こっちの方が断然評価されるべきだ。
ホドロフスキーのDUNE

Jodorowsky's Dune
(22013-US;C-90m.)
製作フランク・パヴィッチ,スティーヴン・スカルラータ
製作総指揮ドナルド・ローゼンフェルド
撮影デヴィッド・カヴァーロ
監督フランク・パヴィッチ
出演 アレハンドロ・ホドロフスキー,ミシェル・セドゥーH・R・ギーガー,クリス・フォス,ブロンティス・ホドロフスキー,クリスチャン・ヴァンデ,アマンダ・リア
1975年に映画の世界にはこんな一大事が起きていたなんて知らなかった。そして、『デューン/砂の惑星』(1984)も、もちろん作らなくてよかった『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021)があまりにもちっぽけに思えてきた。『デューン/砂の惑星』(1984)なんて公開時には、なんて凄い風変わりな作品なんだ、と感心したのに。それらとは比べ物にならないほど、ホドロフスキー版デューンはすごい企画だった。実らなかった夢の夢。オーソン・ウェルズ、サルバドール・ダリ、ミック・ジャガー の出演。ダグラス・トランブルの特撮、ギーガーのデザイン。その膨大な夢の詰まった絵コンテから後のSF超大作の名シーンが生まれているのは真実のようだ。これをコンテと実際にそれを流用した映画の場面とを比較する描写なんて面白かったなぁ。こんなすごいもん初めて見た。
見果てぬ夢、になってしまった一作。その事実を数人の個人の記憶に埋もれさせるのは惜しい、とこの企画になったのか。ホドロフスキー、かつての作品群から考えるととてもまともな人物像は想像できなかったのだが、これが人当たりの良い、誰でも取り込んでしまうような人たらし的な人物だったのが意外。彼がリンチ版/砂の惑星』(1984)を意を決して観に行った後の感想が面白かったなぁ!非常に良くできたドキュメンタリーで、同時に想像もできない深遠な人物の狂った夢を垣間見たような。そう、この『DUNE』というホドロフスキー監督の1975年度作品をいかにも観た、って気にもさせるのだ。一挙両得な一作だ。

ハウエルズ家のちょっとおかしなお葬式

Death at a Funeral
(2007-US/GB;C-90m.)
製作総指揮ウィリアム・ホーバーグ,ブルース・トール,アンドレアス・グロッシュ,フィリップ・エルウェイ
製作シドニー・キンメル,シェア・ストーリングズ,ローレンス・マルキン,ダイアナ・フィリップス
監督フランク・オズ
脚本ディーン・クレイグ
音楽マーレイ・ゴールド
撮影オリヴァー・カーティス
出演者 ジェーン・アッシャー,マシュー・マクファディン,キーリー・ホーズ,アンディ・ナイマン,ユエン・ブレムナー,イジー・ドノヴァン,ピーター・ディンクレイ
『お葬式に乾杯!』(2010)があまりに面白かった。が、それがこの作品のリメイクだと知って探しました、これ。さすがにめちゃくちゃに面白い!
2010年度版はこれを黒人版に置き換えていたけれど、オリジナルのこれは白人版。未亡人をジェーン・アッシャーですよ、目を疑ったね、このクレジット。こうやって2000年代に入っても活躍してるのが嬉しい。話は基本的に同じなんですが、こっちの方が良くできていると思える。そして、驚きは、二作共にとあるキャラクター、同じ人が演じてるんですね!まぁ、代わりはできないだろうな、って役ですが!いいなぁ、リメイク版のそういう洒落。どちらももっと好きになってしまいました。まだどちらも未見の人はこれを先に、そしてぶっ続けで観る幸せをどうぞ!
ストーブリーグ

스토브리그、Stove League
(2019-KR:TV 16話)
監督チョン・ドンユン
脚本イ・シンファ
音楽パク・セジュンオープニングイ・ウォンソク「キューサイン」
出演 ナムグン・ミン,パク・ウンビン,オ・ジョンセ,チョ・ビョンギュ
なんか素晴らしかったのでは。いや、まったく最高でした。なんで韓国映画や韓国TVではスポーツものがこんなに、燃えるんだろう。なんとなく観始めたのだが、50年近く冷めていたプロ野球への熱さを思い出したようだ。お昼から球場へ行って練習中の選手からボールにサインしてもらったり。確かにそういう子供の頃の時間もあった。野球そのものよりも、国民みんなが野球評論家みたいになって、ここでもあそこでも野球を分かったように語る、そういう人々が嫌になって離れたのだろう。どこの球団の誰がなんとかでどうこう、なんて偉そうに言ってるこいつらはなんだ、と。こういう連中と共通項で括られちゃたまらんな、って気分だった。だから、映画にしてもプロレスにしても車にしても趣味として自分のものにしている人じゃないと共通項として語らないようにしている。話題にする必要もない。だから野球は見ないし知らないし、で50年近く過ごしてきた。今でもTVでも野球放送は縁が無いし興味もない。全日本プロレス放送巨人軍野球放送の雨傘番組にされたせいもあってプロ野球憎し、にもなってしまった。が、こうしてちょっと離れた韓国の熱い人々の野球愛を感じるとそれはもう、一緒に熱くなるしかないのだ。この主演で各賞獲得のナムグン・ミンが本当にうまいと言うか適役と言うか。熱くて大騒ぎする熱血漢が男らしい、となっている韓国映画でこういう冷めていて落ち着いてて騒がない、ってのも新鮮で。私も仕事上ではこういう人になりたい、と思うのですがなれたためしはない。そして熱くて一本気で可愛いパク・ウンビン。韓国女優にありがちな単に美女、ではないところがまた良かった。
「そんなに高級なスーツじゃないからいいですよ」
「それは分かってますけど」
ってやり取りが無茶苦茶おもしろかったなぁ。韓国のTVドラマは本当に続けて観るしかない、って作り方をしている。仕事や家の事放ったらかしにできるなら、最初から最後まで終日どころじゃなくて寝ないで続けて観てしまうだろう。NETFLIXではさらに次のエピソードにすぐ移れてしかもイントロをスキップなんで出来てしまうのだからもう続けて観るしかないだろう、って。ほんとうまいよ。その後、DVDも全巻お買い上げして繰り返し観てしまうことになるのはもうこの時点から分かっていた。
秘密の森

비밀의 숲 / Stranger
(2017-韓国TV)
製作総指揮イ・チャンホ,ミン・ヒョンイル,コ・ビョンチョル,イ・ソンジン
プロデューサーパク・ウンギョン,ソ・ジェヒョン
監督アン・ギルホ(シーズン1),ユ・ジェウォン(シーズン1),パク・ヒョンソク(シーズン2)クリエイティブ・ディレクターキム・ソクウォン,キム・ソンギュン
脚本イ・スヨン
テーマ曲作者キム・ジュンソク、作曲キム・ジュンソク,チョン・セリン,オープニング秘密の森
撮影監督チャン・ジョンギョン
出演チョ・スンウ,ペ・ドゥナ,イ・ジュニョク,ユ・ジェミョン,シン・ヘソン,チョン・ヘジン,チェ・ムソン,ユン・セア
まったく素晴らしい。『ストーブリーグ』の感動があまりに大きかったもんだから、その後遺症で韓国ドラマをさまよって出会う。なんかどす黒い犯罪物を目指していたのだが、そうではなくてお行儀の良い検察・警察ドラマであった。なんか地味ではあるな、と思いつつ観ていてら、久しぶりのペ・ドゥナ!しかもこの役がまたいいんです。何やってもうまいのはこの人の常であるが、これはもしかしたら、並み居る映画作品を含めても一番良いのではないだろうか。主人公のチョ・スンウがどこで観た、と思ってたら『マラソン』でしたね!そうすると『H』のアレですよね!幼いころの脳手術で感情を司る部分を切除してしまったがためにこういうキャラクターになったんだ、って説明もまたうまい。この並外れた冷徹さと正義感がこれまた新鮮なんです。あまりの面白さにシリーズ1もシリーズ2も一気に観てしまう。やることいっぱいあるんだけど仕事どころじゃないな、と、日夜これが気になって気になって。きょうはどうやって時間作ろうか、と。シリーズ1の最終回になるところで急遽西表島に数日行くことになって、ほんと残念だった。旅行どころではないのだ、私は。しかし、この旅行では、地の果てのホテルのレストランで東京での仕事上のお客さん家族と隣り合わせになるという韓国ドラマ並みの偶然も有りました。シリーズ3は作られるであろう作り方なので、楽しみにしています。と、こういう風に韓国ドラマから抜けれなくなる身体になりつつあります。これはいかん。まだまだ観るべき映画がいっぱい溜まってるでしょう。
神探大戦

Detective vs. Sleuths
(2022-香港・中国/C-101m.)
監製:韋家輝,邵劍秋,朱淑儀
導演:韋家輝
動作指導:黃偉亮
編劇:韋家輝,陳偉斌,麥天樞
配樂:張兆鴻,鍾志榮
攝影:鄭兆強(HKSC)
主演:劉青雲,蔡卓妍,林峯,譚凱,陳家樂,湯怡,何佩瑜,李若彤
堂々の続篇、と言うことでちょっと慌てた。第一作の事をまったく何も思い出せないのだ。ラウ・青雲の映画だから観てはいるのだろうが。で、観直しました。うーん、すごかった。
で、これも、もう勢いづいて続けて観るしかない、と。金像奨の主演男優賞他いっぱいにノミネートもされているとの事だし。
いや、なんか、もう、全篇疾走しっぱなしの作品で、しかも香港ローカルにしか通じないような事件ネタ、地元ネタ満載で(と、私は想像しました)。ここで登場する猟奇事件はいずれも香港で実際に起こった有名な事件をモチーフにしているとの事ですよ。凄かったなぁ、青雲の演じる主人公のこの頭と勘の鋭さ!全篇喚きまわって走り回って早口で駆け抜けるそのお姿!お疲れ様!そして、猟奇味満載のこの作品は終わってみれば、なにかしみじみ、人の業の深さみたいなものが残るんです。うわ、これはもしかしたら金像奨いけるのでは、と思いつつも仕事が変にドタバタして金像奨の日をすっかり忘れてました。しかも中継のあるその時間も手を抜けない仕事中で。ええ、盟友フランシス呉鎮宇も会場来てるの!聞いてない!授賞式終わってからしっかり結果を教えてもらえました。ああ、青雲主演男優賞獲ったんだ!そうだよねぇ!翌日、さっそく受賞の瞬間の映像まで観れて、感激でした。なんとフランシスが主演男優賞のプレゼンターだったんですか!ええ、しかも候補の中にアンソニー・ウォン黄秋生もいたの!どっちが獲っても親友同士、いい絵になっただろう。そして青雲受賞の瞬間、誰よりも早く黄秋生が青雲のところに駆け寄って祝福するシーン!この仲良したち!まぁ、その前のフランシスのスピーチは、あまりにも自己アピールがきつ過ぎたみたいであまり感心しなかったが、やっぱり彼が青雲の名前を呼んでトロフィーを渡すシーンは絵になり過ぎた!この3人の関係を知る者としては涙ものでした。
思えばもう十数年前かな、金像奨の主演男優賞にフランシス(『無間道2』)と青雲(『忘不了』)の両方がノミネートされ、これはどっちかが勝ってどっちかが負けるんだな!どうしよう、とそればっかり心配して私は会場にいたのだった(作品の内容からして私はたぶん青雲が獲るのではとふんでいた)。結局、私たち的には大番狂わせでアンディ劉德華が『大隻佬』で受賞してしまいました。これはこれで素晴らしい内容なのですが。帰りに会場の外で会った青雲の静かな憤りを目にしていた(奥さんは「大丈夫、全然怒ってないから」と笑っていてたけど)。あれが2003年?2004年?もうあれから20年ですか(その後彼は『我要成名 (2009)
』で主演賞は取りましたが)!
そして、青雲の受賞スピーチ。これはもう、歴代で最高のものでした。感動したなぁ。ああ、やっぱりこの人は凄いなぁ、と。映画そのものよりもこの短いスピーチのほうがずっと良かった。これが人柄だな、と。そのままじゃないか。私は香港の映画人で彼の事を「いい人なの」と言わない女優に会ったことが無い。
とにかく青雲と奥さんエイミー(郭藹明)さんに昨晩遅くに感激してメールした。いいスピーチだったねぇ!と言うしかなかった。今朝方さっそくエイミーさんから返事が来ていた。二人ともフランシスとはコロナ禍のせいで長らく会っていなかったそうで、授賞式前の舞台の袖では久しぶりに盛り上がったそうです。青雲の次回作ではフランシスとの共演よ、との事でしたのでこれまた楽しみです。
この作品を観た誰もがそうするだろうけど、私もやっぱり主人公と同じ黄色いレインコートを探しました。これを着て背中にはアレを書くしかない!と。でも日本では売ってないみたいだなぁ。こんなの香港で探してくれ、なんてあちらに頼んだら、バカ、と思われるだろうな(→事実、バカ)。

マッド探偵

神探
Mad Detective
(2007-香港:C-91m.)
导演:杜琪峰,韋家輝
监制:韋家輝,杜琪峰
制片:朱淑儀,施愛玲,陳澤軒
编剧:韋家輝,歐健兒
统筹:馬中駿、鞠覺亮
配乐:Xavier Jamaux
摄影:鄭兆強
主演:劉青雲,林家棟,安志杰 (粵 語配音:鄭保瑞),林熙蕾 (粵語配音:郭少芸),陳慧珊 ,谷祖琳,李日昇,李彩寧(粵語配音:彭千玲),張兆輝,林雪,劉錦玲,李國麟,高雄
『神探大戦』を観るにあたって、これの続篇だと聞いて慌てた。なんだ、何も覚えてないじゃないか、と。確かに観た気はするのだが。まぁ、最近記憶力が皆無なので仕方ないか、ともう一度観る気になる。
で、自宅図書館で探してみるとやっぱりラウ青雲のコーナーに香港盤のDVD有った。げ、なんとこれ未開封で新品のままだ。やっぱり観てないのかな、とさらに自信が無くなってくる。
観始めてすぐに、ああ、なんて青雲若いんだ!安志杰 (アンディ・オン)は万年青年だから若くてもいいのだが(ちなみに広東語吹替えはソイ・チェン!)。林家棟も若いな。なんだこれ相当昔じゃないか、と思わす画質。しかし、冒頭からもうぶっ飛んでる作品ですね。あんな耳貰うシーンのために高雄は出てきたのか!張兆輝とか林雪とかもうジョニー・トー組の定番がとんでもない役です。しかし女性陣も癖が有るジョニー・トー組!ご贔屓の林熙蕾 (広東語吹替は郭少芸師匠!)は嬉しいなぁ!しかも谷祖琳。さらにいきなりフローラ陳慧珊ですぜ、しかもこんな小さな役で。この人とは香港でフランシス呉鎮宇家の息子10歳パーティで一緒になった。一緒にいた家人が「あら、あなた知ってる。TVに出ている人?」とか声かけたので慌てた。そもそも芸能関係に疎いからこんな大物にこの言い草!「そうなの。知ってる人がいてくれて嬉しいわ」なんて明るく返してくれたのでほっとしたが。そのまま『衝上雲霄』出演の時の北海道ロケ話で盛り上がったんです。私もロケ地まで行ったし(今のところ生涯唯一の北海道行)、ロケの間フランシス呉鎮宇の現・奥様はうちにひと月滞在してたし。さらにフローラと盛り上がったのは、どちらも自宅にホームシアター構えていてDVDとか山のように揃えている、と趣味が一緒だった事だ。あたしのうちは凄いわよ何でも有るわよ、と言ってたので、日本に来た時はうちに来てみたら、と話してたのだが....
さて、このお話の青雲はやはり.....凄いとしか言いようがない。こういうキャラクターは今まで無かったよなぁ、と。金像奨の主演男優賞にもノミネートされたが獲得できず(受賞は『投名狀』のリー・リンチェイ)。韋家輝と歐健兒の脚本賞は受賞。凝った話だったからなぁ。お話と共に画面も陰湿で。独特だったなぁ。いかにもジョニー・トー作品らしく省略の美学がこの複雑な物語の中でたっぷり効いてました。これはこれで凄い作品だと思う。
けど、もう一回観るかなぁ。特に、あのシーンだけは正視できないでしょう、一生涯。
无线(TVB)翡翠台《Dear Leslie 70》(张国荣70诞辰)

レスリー・チャン生きてたら70歳誕生日展示会イベントに合わせてTVBが放映した一作。もちろんTVBばかりの活躍ではないのだが、やっぱりTVBとは縁が有ったんだな、と。
作品の構成や盛り上がりもあまり無いしまらないドキュメンタリーと言うよりも単にTVBの宣伝活動?といったものでしたが、やはり、こうやって在りし日とその言葉を目の前にすると心を打たれるしかないのです。広東語の字幕が出てくれたので詞の内容がいちいち判って(出ないと分からないとこが情けない)。
2003年は、みんなが辛かった。
うちには香港電影迷たちが集まってなんだかんだと話して遊んでいるうちに、いきなり一人がわっと泣き出した。誰かがそっと抱きしめた。誰も何も言わなかった。